「完全に不適切」?
東京オリンピック・パラリンピックが遠ざかる・・・ 組織委員会の会長だった森喜朗元首相が女性蔑視発言で辞任。もう開幕まで5か月あまりなのに、後任さえ藪の中。ただでさえコロナ禍で開催は微妙な状況なのに。
この発言のあと、森氏の謝罪会見を受けて、IOCは"issue closed"(この問題は終わったと考えている)とした。しかし発言に対する内外の批判の嵐の中で、手のひらを返したように厳しい声明を出してきた。
"The recent comments of Tokyo 2020 President Mori were absolutely inappropriate..."
この"absolutely inappropriate"の訳を当初日本のメディアは
「完全に不適切」としていた。(2月11日「羽鳥慎一モーニングショー」テレビ朝日など)
これは、日本語として変!意味はわかるけど、日本語ではそんな言い方しないもんね。
じゃあ、あなたならどういう日本語にしますか?
「まったく不適切」
僕はOKだと思いますが、異論があるかも知れません。
では「適切な」訳は?
「極めて不適切」でしょう。(朝日新聞、NHKほか)
言葉って難しいですね。辞書の訳語を足せばいい、というわけにはいかない。だから面白いのだけど。
ある言葉と言葉をくっつけるときに、「相性」ってもんがあるのよね。例えば、英語で"make tea"とは言うけど、日本語ではお茶を「作る」ではなく、お茶を「いれる」。これをcollocationといいます。coは「共に」locationは「場所」で、一緒に使う、言葉の組み合わせのこと。commit a crime「罪を犯す」とか、strong coffee「濃いコーヒー」とか。日本語のcollocationとして、「不適切」によくくっつくのは「極めて」。
英語のcollocation辞典はたくさんあるけど、いまいち使いにくい。日本語のまともなcollocation辞典は皆無と言っていいと思います。誰か作って下さい!