Kai's English Room

僕は、英語が大好き。日本で独学で英語を勉強して、英検1級に合格。今も英語を教えています。

物主構文(3)

今日は、2020年7月7日および19日の記事に続いて、「物主構文」の3回目です。

CNNのツイートから実例研究をしましょう。

Working long hours is killing hundreds of thousands of people a year through stroke and heart disease.

長時間労働が原因で、脳卒中や心臓発作を起こし、毎年数十万人もの人が亡くなっている」(拙訳)

文を単純にするために、through stroke and heart diseaseを、取ってみます。

Working long hours is killing hundreds of thousands of people a year.

Working long hoursが主語、動詞がis killing、hundreds of thousands of peopleが目的語ですね。つまり、「長時間労働」が「人々」を「殺している」という「物主構文」です。カチッとした「名詞」と「名詞」の間の「作用」という形で、明確に論理ができています。

日本語では、「長時間労働がたくさんの人を殺しています」という表現は普通しませんから、「長時間労働が原因で多くの人が死んでいる」というふうに、「人」が主語になります。「・・・が原因で」の部分は、あいまいで流動的な感じですね。

それでは、上の「拙訳」を単純化した、次の日本語を英語にしてみてください。英文は見ないでね。

長時間労働が原因で、数十万人もの人が亡くなっている」

Hundreds of thousands of people are dying from working long hours.という感じでしょうか。もちろん、これでOKなのですが、元のCNNの英文と比べてみると、

「ああ、やっぱり日本人だなあ。どうしても、主語は『人』にしちゃうなあ」

と思うかもしれません。

「英語らしい英語」を使えるようになりたい!そのために極めて有効な練習法が、

今日やった「復文」です。つまり、英文を、まず自分で、できるだけ自然な「日本語らしい日本語」にします。それを数日寝かしておきます。記憶が薄れたところで日本文を取り出し、逆に英語にしてみるのです。それを原文と突き合わせてみます。するといろいろな発見があり、英語について、日本語について、本質的な理解が深まります。

えらそうに言っていますが、実際やるのは結構大変。僕自身さぼりがちです、トホホ。日本語は自分で考えなくても、質の高い自然な日本語が手に入るなら、他人の訳でも構いません。ポイントは、直訳でなく、できるだけ自然な日本語、自然な英語を目指すこと。

余談ですが、この方法は、TBSのニュースキャスターだった浅野輔(たすく)さんから習いました。昔、短期の通訳セミナーに参加した時、浅野さんが講師のおひとりだったのです。「君の訳は、大雑把主義だね」と叱られましたが、今はいい思い出です。

NHKラジオで「高校生から始める現代英語」という素晴らしい番組をやっておられる伊藤サムさんは、この方法を「反訳」と呼んで、番組の中で取り入れておられます。(伊藤先生の使用される反訳用日本語は、英語にしやすいようにあえて、やや不自然な日本語になっています)

 さて、過労死はこわいですね。記事では、週55時間以上の人はヤバイとあります。しかも、リモートだと勤務時間が増える傾向だって。どうしよう!