Kai's English Room

僕は、英語が大好き。日本で独学で英語を勉強して、英検1級に合格。今も英語を教えています。

真鍋さんの日本人論

 今年のノーベル物理学賞受賞者のひとりに、真鍋叔郎さんが選ばれました。現在、世界にとって極めて重要なテーマである「気候変動」研究の基礎を築いたひとりが、日本生まれの気象学者だというのは誇らしいですね。

 でも真鍋さんは東京大学で博士号を取得後、プリンストン大学で研究を行い、米国籍を取得しています。同大学で行われた受賞記念記者会見で、それに関する質問が出ました。(記者会見の模様はYou Tubeで見ることができます。真鍋さんの英語は決して流暢ではありませんが、ユーモアがあり、人を惹きつけます。そして一番大事なことは、やはり「中身」なんですね。

 なぜ米国籍を取得したのかと問われて、先生は興味深い日本人論を展開しています。

日本では「他人に迷惑をかけないように、周りと協調していくことが非常に重要」

「他人がどう思っているかを常に気にかけている」

"When Japanese say, "Yes", it doesn't necessarily mean yes. It could mean "No"

(日本人がイエスと言っても、それは本当にイエスとは限らない。ノーという意味かもしれない。)何よりもThey don't want to hurt other people's feelings. (他の人の気持ちを傷つけたくないのです)

それに対してアメリカでは、I don't worry too much about how other people feel.(他の人の気持ちなんてあまり気にしない)

「自分がやりたい研究が、自由にコンピューターを使って、いくらでも予算をもらってできる」から、Living in the U.S. is wonderful.

 日本に戻りたくない理由のひとつは,

I' m not capable of living harmoniously.

(私は周りの人と協調してやっていくことができないから)

 日本では最近、常に周りを気にかけ、はみ出さないようにという息苦しい「同調圧力」がさらに強まっているように感じる。「空気」を読んで、上に「忖度」しないと、「いじめ」られそうで、とても「やりたいことを自由に」という雰囲気ではない。それは学問の世界でも同じで、しかも研究予算を獲得するには「短期間に成果を出せ!」という傾向が強まっているようだ。その結果、真鍋さんの言うcuriosity-driven(好奇心に突き動かされた)自由で独創的な研究ができなくなっている。

 それにしても、真鍋さんは味のある魅力的なお人柄ですね。

大谷翔平

 この100年誰もやったことのない偉業を成し遂げた大谷翔平選手。

アメリカの著名なスポーツ専門誌Sports Illustrated10月号が大谷選手の特集をしている。話題になったのがその表紙。なんと、投手版と打者版の2種類あるのだ。これは前代未聞のことで、この号はアメリカでも人気を呼び、入手困難だという。

表紙の文句は同じで、

He's not the new Babe Ruth.

He is more amazing than that.

(彼はベーブ・ルースの再来なんかじゃない。

もっとすごい。)

大谷の特集記事自体も興味深い(ネットのSIのサイトで読めます)。

この中で一番印象に残った言葉は、エンジェルスのベンチコーチの発言。

“I’m old school, or whatever you’d like to call it,” says Angels bench coach Mike Gallego. “I don’t talk this way about anybody. But what he’s doing this year you will never see again.

“Unless it’s by Ohtani.”

「私はいわば古い人間で、選手のことをこんなふうに言うことはないんだが」

「大谷が今年やってることは、もう二度と見られないよ」「あいつがまたやる時以外はね」

You will  never see what he's doing this year again. が普通の語順ですが、

下線部が前に出た形です。

Unless it’s by Ohtani.が効いていますね。「こんなすごいことはもう二度と誰にもできない」と言っておいて、一拍の間を置いてから、「大谷以外には」

こんな突拍子もない漫画みたいな活躍ができるのは、今後も大谷選手しかいないというのは、最高の賛辞ですね。個性を重んじるアメリカ社会で、one of a kind(唯一無二、オンリーワン)と呼ばれる日本人は少ないと思います。

 さて今日のお勉強は、接続詞unlessです。

unless=if...not (もし~でないならば)

notを含んでいるのがミソです。

I'll go to Mt.Takao tomorrow unless it rains.

(雨が降らない限り、明日は高尾山に行きます)

Please don't call  early in the morning unless it's urgent

(緊急時以外は早朝の電話はご遠慮ください)

We can't stop climate change unless we drastically change our life style.

(私たちがライフスタイルを大きく変えないと、気候変動は止められない)

例えば上の例文のunlessを空欄にして、選択肢を下のように作れば、たちまち

TOEICの問題でき上がり!

We can't stop climate change (               ) we drastically change our life style.

(A) if     (B) unless     (C) or     (D) that

happy

"What do you want to be when you grow up?"

(大きくなったら、何になりたい?)

親や先生が、子供によくする質問ですね。

a doctor, teacher, pilot, baseball player...

などという答えが多いですが、今どきは "I want to be a You Tuber." かな。

さてここに、John Lennonの文章があります。

5歳の時、母に言われた

「幸せ」が人生で一番大切よ

学校に上がると先生に聞かれた

「大人になったら何になりたいですか?」

僕は「幸せ」と書いた

先生は言った

「あなたは質問がわかっていない」

僕は先生に言った

「あなたは人生がわかっていない」

ジョン・レノン

(拙訳)

 

1.拙訳についての言い訳

 theyはここではteachersを指しています。「先生たち」とすべきでしょうが、

ジョンの文学的な文章(詩のようなエッセイ)という原文の性質と、訳文の流れを重視してあえて「先生」としました。

 assignmentは「課題、宿題」ですが、ここでは教室で先生が質問をして、答えを

作文に書かせるような状況が考えられます。そこで「質問の意味が理解できていない」と言う意味の訳にしました。

 最後のジョンの言葉は「先生は・・・」が自然な日本語ですが、

あえて「あなたは・・・」としました。子供の頃とはいえ、

ジョン・レノンだもん。「権威に対する反逆」の萌芽はあったでしょう。先生と同じものの言い方を返すのもジョンらしいかなと。

2.中身のメッセージについての愚考

 お母さんの言いたかったことは、

「将来どんな仕事をしようが、どんな生き方をしようが構わない。人生で一番大事なことは、それで自分が『幸せ』かどうかだ」

ということじゃないかな。

年収1億以上稼ぐ金融トレーダーでも、人も羨む高級官僚でも、本人が「幸せ」かどうかはわからない。一方で、あまり儲からなくても、誰かのために働くことで「生きがい」を感じている人もいる。日々の忙しさのなかで、一番大事なことー「幸せ」ーを忘れていないか?

 ジョンは小さいころから、母親の言葉もあり、直感的にそういうことがわかっていたから、先生が「医者だ、弁護士だ、サッカー選手だ」という答えを期待しているのが馬鹿に見えたんじゃないかな。

 

とは言っても、やっぱりお金は欲しい・・・

だけじゃない

大谷翔平選手が、TIME誌の「世界で最も影響力のある100人」に選ばれた。紹介文は元ヤンキースの名選手だったA-Rodが書いている。

大谷翔平は現代のべーブルースだ、いや、今季の活躍はルースを凌ぐ。」とした後、ファンやチームメイトを大切にし、皆に愛されている「人柄」について、こう書いている。

Not only is he incredible on the field, but off the field he’s a gentleman.

「グラウンド上で素晴らしいだけでなく、グラウンドの外でも”ジェントルマン”だ」

Not onlyという副詞句が強調のため前に出たので、その後he isが「倒置」されis heになっていますね。

not only A but also B 「AだけでなくBも」

これは試験によく出る有名なイディオムですが、

ここではalsoが省略されて

Not only A but B

になっています。

実は、not only ...but alsoがこのまま完全な形で使われることは実際には少ないのです。

普通は次の2パターンが多いです。

not only A but B 「AだけでなくBも」

not just A but B      「〃」

下のパターンの例を挙げます。米副大統領のtwitterから

(ワクチンを接種しましょう。あなたご自身のためだけでなく、お住まいの地域のためにも)

受験英語は実はとても役に立ちますが、「実際の使われ方」を「本物の例文」で確かめることが大事です。参考書や辞書の例文ではなく、コミュニケーションのために実際に使われた現代の例文をできるだけたくさん集めるには、なんといってもネットが一番。ただしネットの文は正しいとは限らないので「信頼できる出典から」、「多数」集めること。

蓼(たで)食う虫

 先月、バイデン大統領は、米国で販売される新車の半分を2030年までに電動車にするという目標を掲げ、大統領令に署名しました。新規雇用の創出、温暖化対策とともに、この分野で先行する中国から主導権を奪い返すのが狙いです。

 バイデン大統領の発言。

"The future of the auto industry is electric. There's no turning back."

自動車産業の未来は電動車です。もう後戻りはできません。」

さて、今日のポイント

There is no ...ing     ~できない(不可能)

これはよく試験にも出るヤツ(動名詞の構文として)ですが、実際にもよく使います。

上の文は、言い換えると、

You can't turn back.

学校で教わる例文は、

There is no accounting for tastes.

蓼(たで)食う虫も好き好き(すきずき)

account for=explain (説明する)tastes(好み、趣味)「テースト」は日本語になってますね。つまり「人の好みは説明がつかない」

例えば、

「なぜあんな美人があんな奴とつきあってるんだ?」

「まあ、人の好みはいろいろだからね」「人さまざまだから」

受験生の僕は(2浪しました)この説明で、なるほどと思いました。

でもね、長年英語をやってきて、この英文には1度も出会ったことがない。

こんな時は、Tastes differ.が普通です。「受験英語」は役に立つけど、実際に使わない例文はやめてほしいな。

ちなみにこの日本語訳は、「ことわざ」ですね。「蓼(たで)は葉が酸っぱくて普通の虫は食べないけど、この蓼を好んで食べる虫もいる」そこから「人の好みはさまざまだ」という意味。若い学生たちに、このことわざを言うと、たいてい「知らなーい!」「聞いたことない」という反応。最初はかなりショックでした。「日本語が通じない・・・」「僕の日本語は古いのか?」

言葉は変化します。でも最近、豊かな日本語が瘦せていくような気が・・・(ウッセイワ!と言われそうだな)

閑話休題

このThere is no ...ingのよく使う例文を挙げます。

There is no denying we are causing climate change.

「私たち人間が気候変動を引き起こしていることは否定できない

There is no telling(knowing) what may happen tomorrow.

「明日何が起こるかもわからない。一寸先は闇(やみ)」

 カーペンターズの名曲 ’I won't last a day without you’(愛は夢の中に)の一節は、

"When there's no getting over that rainbow" 

「あの虹を超えて行くことはできなくても」

つまり、「夢が叶わなくても」、あなたがいれば大丈夫。

 

ところで、電気自動車化、日本では大丈夫?

自分にもっと優しく(大坂なおみの葛藤)

 大坂なおみ選手、今年の全米オープンは3回戦敗退。試合後の記者会見で涙を流しながら「テニスからはしばらく離れます」と発言。全仏で記者会見を拒否して物議をかもした後、「うつに悩まされている」と公表した大坂選手。最近twitterで現在の心境を述べていた。

画像

 平易でわかりやすい英語ですね。悩みながらも、前へ進もうとする意志を感じます。

 twitterではまず「自己評価の低さ」「自信のなさ」を自己分析しています。

「なぜいつもこんな風に感じてしまうのか、最近自問自答していて理由のひとつに気が付いた。」「心の奥でいつも”私はダメな人間だ”と思っている。」

「自分を”よくやった”と褒めたことは一度もない」「いつも”お前はダメだ””まだまだだ”と自分に言い聞かせている」

「謙虚だと言われたけど、実は自分を卑下しているだけ」

 英語の点では、

 suck

suckは俗語で、学校では教えてくれませんが、よく聞きます。「ひどい、ムカツク、どうしようもないクズだ」=very bad  使うのはやめた方が無難かも。(例)This job sucks.

I could do better.

「もっとやれるはず」「まだまだこんなんじゃいけない」couldは仮定法なので、この文は過去の話ではなく、現在のこと。

self deprecating

「自分を卑下する」=critical of oneself

  そのあと、「これからはもっと自分を褒めようと思う。」「みんなもそうした方がいいよ」と続けます。

例えば、「朝ちゃんと起きて、後回しにしないでやるべき事を済ませた?すごいじゃん!」「仕事で懸案になっていた事を片付けた?すばらしい!」

 英語を見ましょう。

procrastinate  (やるべきことを)ぐずぐず引き延ばす=put off

bug=bother 悩ます

 ここで大事なメッセージ

You life is your own and you shouldn't value yourself on other people's standards.

「自分の人生なんだから、他人の価値基準で自分を評価しないこと」

 そして、もう他人の期待を背負うのは無理だと宣言。

最後に「朝、起きられたら、もうそれだけで”勝ち”だよ」

 ここからは僕個人の感想です。

 僕が大坂選手の言葉に惹かれるのは、自分にも性格的に似たところがあると感じるからです。僕は小さいころから「いい子」のふりをして、親や先生、世間の言う通り「優等生」として生きてきて、いつも「まだまだこんなんじゃダメだ」という内面の声がしていました。でも、あるところからもう「優等生」でいることが能力的にも精神的にもできなくなりました。もう「誰かを喜ばす」「他人の期待に応える」ために「完璧を目指す」生き方が破綻したのです。頭の中を幾千、幾万の「声」が占拠し、大げさでなく1分、1秒を生きるのがつらくなりました。大学を休学して長い長い「引きこもり」。そこから生還できたのは、ある日突然「自分の人生だから好きなことをやろう」と思ったからです。

 相田みつおさんの「幸せは自分の心が決める」という詩が好きです。それでも最近は「他人の基準」で自分を評価している自分に気づくことばかりですが。

ここで、2021年3月31日の「手放す」と言う記事でも触れた吉野弘さんの「奈々子に」という詩を引用します。

 

奈々子に  吉野弘

赤い林檎の頬をして
眠っている 奈々子

お前のお母さんの頬の赤さは
そっくり
奈々子の頬にいってしまって
ひところのお母さんの
つややかな頬は少し青ざめた
お父さんにもちょっと
酸っぱい思いがふえた

唐突だが
奈々子
お父さんは お前に
多くを期待しないだろう
ひとが
ほかからの期待に応えようとして
どんなに
自分を駄目にしてしまうか
お父さんは
はっきり
知ってしまったから

お父さんが
お前にあげたいものは
健康と
自分を愛する心だ

ひとが
ひとでなくなるのは
自分を愛することをやめるときだ

自分を愛することをやめるとき
ひとは
他人を愛することをやめ
世界を見失ってしまう

自分があるとき
他人があり
世界がある

お父さんにも
お母さんにも
酸っぱい苦労が増えた
苦労は
今は
お前にあげられない

お前にあげたいものは
香りのよい健康と
かちとるにむづかしく
はぐくむにむづかしい
自分を愛する心だ

 大坂選手は自分の内面の葛藤を隠さずに公表していて、とても人間臭くて好きです。そんなことをするスーパースターは他にいません。「アスリートのメンタルヘルス」保護に一石を投じるためでもあると僕は思います。

 さて、今日僕はちゃんと朝起きて、ブログも書いたし、上出来!

疑う余地がない

 8月9日、IPCC(気候変動に関する政府間パネル)が第6次報告書を公表し、人間活動が温暖化の原因だと「断定」しました。もう科学的にはこの件は決着したわけです。トランプ前大統領と共和党の一部の「懐疑論」は完全に敗北しました。

 さて、この報告書のその部分を引用します。

It is unequivocal that human influence has warmed the atmosphere, ocean and land.
大気・海洋・陸地の温暖化が人間の影響であることは(人間活動が大気・海洋・陸地を温暖化したことは)、疑う余地がない

 

 今日は、この「疑う余地がない」という単語を覚えましょう。

unequivocal  疑う余地がない(=clear)

レベルの高い単語ですが、ニュースには出てきます。

長い単語を覚えるには、バラして「語源分析」も有効です。

un + equi + vocal

equi=equal 等しい   equilibrium(バランス)equivalent(同等の)

vocal 声の vox=voice(声)から ボーカルだから覚えやすい

つまり、equivocalは「等しい声の」例えば、an equivocal answer というと、yes なのかnoなのかよくわからない、どっちともとれる(yesと noという2つの等しい声がする)→あいまいな、はっきりしない

これにunという反対の接頭語がついて、

「あいまい」では「ない」→「はっきりした」「明確な」「疑う余地がない」

 同報告書の著者の一人で英レディング大学のエド・ホーキンス教授の発言。

"It is a statement of fact, we cannot be any more certain; it is unequivocal and indisputable that humans are warming the planet."

(これは、事実を述べたものです。絶対に間違いありません。地球温暖化の原因が人間だというのは、疑問の余地も議論の余地もありません」)もうこれ以上certainにはなれないくらいcertainというわけ。

 ついでにここに出てきた、unequivocalと同じような意味の単語を覚えましょう。

indisputable 議論の余地がない

dispute(議論する)ことができない(in)くらい明白

 菅首相は、「2050年までに脱炭素社会を実現する」と宣言したが、具体策は?まさか「原発の増設」と言い出すのでは?

 10月31日からイギリスでCOP26が開かれるので、注目しよう。

スウェーデンのグレタさんは何と言ってるのかな?