火を見るよりも明らかだ
「イディオム」で前回扱ったhold one's breathを使った大坂なおみのツイートを読んでみましょう。
I was going to make a celebratory tweet but then I was hit with sadness because we are celebrating something that is clear as day. The fact that so many injustices occurred to make us hold our breath toward this outcome is really telling.
— NaomiOsaka大坂なおみ (@naomiosaka) April 20, 2021
昨年5月にアメリカ・ミネソタ州で黒人のジョージ・フロイドさんが、白人警官に首を膝で圧迫されて殺害されました。この事件を機に、全米でBlack Lives Matterの運動が盛り上がり、世界的な注目を集めました。この事件の「有罪」評決が出されたのを受けて、大坂なおみが出したツイートです。
(試訳)「お祝いのツイートをしようとしていたけど、ふと悲しくなった。ごく当然な事を祝っているんだもの。不当な評決が続きすぎて、今回の評決もみんな固唾をのんで見守っていた事自体が、全てを物語っている。」
clear as day は、「しごく当然」「火を見るよりも明らか」「一目瞭然」
つまり、元警官の有罪は、誰が見ても「きわめて明らか」、当ったり前のこと。なんで私たち、それをお祝いしてるんだろう。これまでアメリカでは、同種の事件がたくさん起こり、警官が起訴されたが、ほとんどは「無罪」評決が出ている。こんどこそは、まさか「無罪」はないだろうと思いながらも、どこか不安が拭えない。だから有罪評決が実際に出るまでは、思わず「息を詰めて、はらはらしながら」見守った。
それが、前回勉強したイディオム"hold one's breath"なのです。
当たり前のことを「固唾をのんで」待たなければいけない、「有罪」は火を見るよりも
明らかだけど、これまでの評決を思い出すと、一抹の不安がよぎる。このこと自体が、今アメリカで黒人が置かれている立場を雄弁に物語っている。
では、英語的に注意すべきことを挙げます。
The fact that... ・・・という事実
that は「同格」ですね。つまり、the fact=that...
同様に、
the thought that...
the idea that...
the belief that...
the hope that...
The fact に対する動詞は、isですね。TOEICなどの試験では、この主語と動詞の把握が重要です。
ところで、このツイートは、日本のメディアでも話題になりましたが、
東京中日スポーツの訳は、明らかに変です。
「お祝いのつぶやきをしようとしてたんですが、なんだか悲しくて仕方なくなりました。私たちが祝福しているこの“何か”って疑う余地がないはずですから。ただハッキリしているのは、今回の結果にたどり着くための私たちの息の根を止めようとたくさんの不正が生じたということですね」(東京中日スポーツ2021年4月21日、字を赤くしたのは当ブログ筆者)
「息の根を止める」???
最近は、コロナに絡んでアジア系市民が襲われるヘイトクライムが多発しています。トランプ前大統領がコロナウィルスを"Chinese virus"とか"kung flu"と呼んでいたことも影響しています。