Kai's English Room

僕は、英語が大好き。日本で独学で英語を勉強して、英検1級に合格。今も英語を教えています。

ネアンデルタール人の考え

ネアンデルタール人は知能が高かったことが最近の研究ではわかってきているが、かつては「野蛮」で「おバカ」だったと考えられていた。

バイデン大統領の発言"Neanderthal thinking"「ネアンデルタール人の考え」も、「おバカ」「大間違い」という意味だ。

 アメリカでは今年に入ってコロナウィルス新規感染者が減少し、テキサス州ミシシッピー州などでは、マスクの着用義務を解除した。しかし、このところ、感染者の「下げ止まり」が見え、「変異株」の広がりも懸念されており、バイデン大統領は油断は禁物だと警告している。

 記事中にバイデン大統領の発言が引用されている。

"The last thing we need is Neanderthal thinking that in the meantime everything's fine, take off your mask, forget it." 

「今一番いけないのは『ネアンデルタール人の考え』です。つまり、「すべてうまくいっているじゃないか。マスクなんてはずしてしまえ。もういらないよ。」というような。」

 

YAHOO! JAPANニュースの訳は、間違っています。

「我々が最後にできることが、ネアンデルタール人の思考で、すべてがうまくいっているからといってマスクを外すこと。しかし、それは忘れてほしい。」(YAHOO!JAPANニュース3月4日)

問題点はふたつあります。

1.the last ・・・ という「試験にでる」イディオム

「最後にできること」では、意味がわからない。

the last...は、強い「否定」の表現で、

the last A to do

最も~しそうにない人(物)、決して~しない

to do の代わりに上の例のように形容詞節も来る。「するとしても最後の」という感じで、中身は強い否定になる。

the last thing we needは「私たちが必要な最後のこと」つまり、「これだけは絶対いらない」

 You're the last person I expected to meet here.

「こんなところで君に会うなんて夢にも思わなかった」

2.同格の接続詞thatの範囲

Neanderthal thinking that...のthatは同格の接続詞です。つまり、Neanderthal thinking=that... で、「ネアンデルタール人の考え」の内容をthat以下で紹介しているわけです。そのthat以下の同格節(名詞節)は、in the meantimeから、forget it.までです。ヤフーの「それは忘れてほしい」だと、forget itがバイデンさん自身の意見のようですが、これは「ネアンデルタール人の考え」の一部なのです。forget itのitは、不明確ですが、この直後のバイデンさんの発言"It still matters."のitがマスクを指しているので、このitもおそらくマスクのことだと思います。やはり「それは忘れてほしい」いう訳は変です。

 この同格のthatは、決まった名詞の後でよく使います。

the fact (thought, belief, idea, feeling, hope, news) that...

・・・という事実

She took off her ring to hide the fact that she was married.

「結婚しているという事実を隠すため、指輪をはずした」

アメリカでは共和党員、とりわけトランプ氏の支持者にマスクを毛嫌いする人たちが大勢います。「個人の自由」だと言って。英語ではanti-maskersと言ったりします。他人の命を危険にさらす自由はないと思うのですが。